教えのやさしい解説

大白法 601号
 
折伏の大事(しゃくぶくのだいじ)
 折伏の意義−抜苦与楽(ばっくよらく)
 日蓮大聖人は『立正安国論』に、
 「世(よ)(みな)正に背き人悉(ことごと)く悪に帰す(中略)是を以て(中略)災起こり難起こる」 (御書 二三四n)
と、大災害や大事件が起こるのは、邪宗教の蔓延(まんえん)によることを明かされました。そして、諸法による人々の苦悩を取り除き、本当の幸せを得せしめるために教えを説かれたのです。つまり、この人々の苦を除き楽を与える「抜苦与楽」の行為が折伏の基本精神です。

 折伏とは慈悲行にして報恩行
 『諌暁八幡抄(かんぎょうはちまんしょう)』に、
 「只妙法蓮華経の七字五字を日本国の一切衆生の口に入れんとはげむ計りなり。此即ち母の赤子の口に乳を入れんとはげむ慈悲なり」(同 一五三九n)
とあります。大聖人の謗法者に対する忍難弘通(にんなんぐずう)は、ひとえに衆生を愍(あわれ)むがゆえの行為、慈悲行にほかなりません。
 また『四恩抄(しおんしょう)』には、
 「末代の凡夫、三宝の恩を蒙(こうむ)りて三宝の恩を報ぜず、いかにしてか仏道を成ぜん」 (同 二六八n)
と仰せです。私たちが折伏を行ずることは、下種三宝尊に対する真実の報恩になるばかりでなく、恩ある一切の人々への報恩ともなるのです。

 法体(ほったい)の折伏と化儀(けぎ)の折伏
 折伏には、法体の折伏と化儀の折伏があります。
 大聖人は宗旨(しゅうし)建立以来、四箇の格言をもって諸宗を厳しく破折されました。これは大聖人が法華経の行者としての折伏行を通して、御本仏の御立場を明らかにされ、また御自身が所持される久遠元初(くおんがんじょ)の本法を顕されるためでした。その本法とは、末法に流布すべき三大秘法です。
 その上で、大聖人は末法万年・尽未来際の衆生を救済する根源の法体として、三大秘法総在(そうざい)の本門戒壇の大御本尊を御図顕あそばされたのです。この根源の法体が建立されたことを「法体の折伏」といいます。
 次に化儀の折伏とは、本門の本尊、本門の戒壇、本門の題目の三大秘法を、日本をはじめ全世界に広く流布せしめて、人々に唯一絶対の信仰を受持させることです。言い換えれば、本宗(ほんしゅう)の僧俗が真剣に折伏弘教に邁進していく姿が「化儀の折伏」に当たるのです。

 如説(にょせつ)修行の功徳
 如説修行とは、法華経に説かれているとおりに修行することをいいます。如説修行の行者は、たとえ三類(さんるい)の強敵が起ころうとも、いかなる魔が競ってこようとも、必ず偉大な功徳を頂戴し、幸せな自受法楽(じじゅほうらく)の境界に安住できるのです。それには大聖人の御意に叶う「如説修行」の振る舞いである折伏を実践していくことが肝要です。

 転重軽受(てんじゅうきょうじゅ)の功徳
 転重軽受とは、折伏を行ずることによって過去のすべての罪障や宿業を今生(こんじょう)に軽い果報として受けることです。
 大聖人は『佐渡御書』に、
 「般泥恒経に云はく『善男子過去に無量の諸罪・種々の悪業を作らんに(中略)余の種々の人間の苦報現世に軽く受くるは、斯(これ)護法の功徳力に由る故なり』等云云。(中略)此の八句は只日蓮一人が身に感ぜり。(中略)此の八種は尽未来際が間一つづつこそ現ずべかりしを、日蓮つよく法華経の敵を責むるによて一時に聚(あつ)まり起こせるなり。(中略)『斯護法の功徳力に由る故なり』等は是なり」(同 五八二n)
と仰せです。業病の苦しみや家庭不和、生活の貧しさなどは過去からの宿業によるものですが、真剣に折伏を行ずれは、その護法の功徳力により、それらをことごとく解決できるのです。

 仏の誡め−謗法与同罪−
 大聖人は御書のいたるところに、謗法を許さず、謗法を呵責(かしゃく)すべきであると誡められています。
 日寛上人も『如説修行抄筆記(ひっき)』に、
 「常に心に折伏を忘れて四箇の名言を思わずんば、心が謗法になるなり。口に折伏を言わずんば、口が謗法に同ずるなり。手に珠数(じゅず)を持ちて本尊に向かわずんば、身が謗法に同ずるなり」(日寛上人御書文段 六〇八n)
と、身口意(しんくい)の三業にわたって折伏を行ずべきことを固く誡められています。
 法華経の敵を許さず、立正安国の精神を胸に、敢然と邪義・邪宗を破折してこそ、真に大聖人の御意に副(そ)い奉る修行となり、謗法与同の罪を逃れることになるのです。

 化他の折伏は自行の実践より起こる
 御法主日顕上人猊下は、
 「かくて毎日の題目受持の功徳は、或る時には直ちに罪障消滅の不可思議な現証となって顕れ、また次第に積って五尺の器(うつわ)に充満し、おのずから化他の徳となって外へ流れ出ます」(大白法 二七七号)
と、毎日の勤行・唱題を着実に実践することによって、必ず化他行である折伏を実行することができると御指南されています。

 御本仏の御遺命「広宣流布・戒壇建立」
 大聖人は『撰時抄』に、
 「法華経の肝心たる南無妙法蓮華経の大白法の、一閻浮提(いちえんぶだい)の内に(中略)広宣流布せさせ給ふべきなり」(御書 八三七n)
と御教示です。今こそ、私たちが果敢に折伏を実践し、その尊い使命を果たしていく時です。御本仏の御遺命たる広宣流布と本門戒壇建立の実現に向かって、その礎を築くべく、「法礎建立の年」に相応(ふさわ)しい信行の実践をいたしましょう。